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    • 2011.02.22 Tuesday
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    バランスのとれたゴール

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       第三の目的は、医療・福祉の臨床(ミクロ)段階と政策(マクロ)段階、それにその中間に位する事業体(メゾレベル)でのマネジメントを個々に論ずるのではなく、これらは相互に絡み合っているので、全体としての整合性のあるマネジメントを考えることが重要であるとの視点からの考察である。それぞれの領域についての研究は進んでいるが、その共通性を求めて一体としてバランスのとれたゴールを目指す試みに本書の特徴がある。

       政策段階でのマネジメントについては、英国のブレア首相が率いるニューレーバーがスローガンとして掲げた「第三の道」政策で採り上げられたNew Public Managementという公共経営理論を詳細に解説している。PFIなど手法で民営化された病院や福祉施設の運営効率を政府の評価機関が事後的に点検して、その成果や問題点を検証しながら進めていく政策評価のマネジネント手法には、わが国の制度改革においても取り入れるべき優れた点があり、本書の問題提起は時宜を得ている。

       本書は、マネジメントを科学したい人、医療・福祉の全体像を捉えたい人、10年単位の大きな流れを知りたい人、新しい研究の視点を求める人にとって必読の一冊である。


      健康格差社会を生き抜く

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         世の中に格差はどうしても存在する。格差はやむを得ない面もある。しかし、著者は格差の存在よりも、格差の大きさを問題にしている。

        健康を切り口にして社会をみつめると、格差社会が進みすぎたため、「いのちの格差」まで拡大していると指摘する。低所得者層ほど病気にかかりやすくて、寿命も短い。

        こんな現実を許していいのかと著者は問いかける。大量の文献とデータを読みこなしたうえで、社会が病んでいると警鐘を鳴らしている。

        さらに問題提起にとどまらず、家庭、環境、職場などの視点から健康格差が生まれてくる原因をさぐる。

         そこで、健康格差の具体的な事例を紹介する気になったので、あらためてページをめくったら具体例がまったくない。

        この本は論文の色彩が濃いから、行政や医療、福祉の関係者にとって、説得力のある優れた文献になるだろう。だけど感情に訴えるものがないから、一般読者にはかなり退屈だ。

        (メモ)

         以下は、気になった個所のメモである。

        ○ 高学歴で年収が多いと、よく眠る。健康で明るく、うつが少ない。元気で長生きする。事故死も少ない。

        ○ 青年期に病気になれば就職戦線で不利になり、よい仕事に就けない。これは社会に出る段階での「機会の不平等」だ。

        ○ 自殺原因に失業や負債による生活苦が多い。

        ○ 夫婦関係に満足していれば、うつが少ない。妻に先立たれた夫はふさぎ込むが、妻は夫が亡くなっても元気だ。

        ○ 近所づきあいとか趣味の仲間などがいないと社会的に孤立し、死にやすくなり、寿命が縮む。

         この本は、データから確かに言えることだけを絞りだしているから、学者らしい態度をつらぬいている。だが、一般向けの新書なのだから、もう少し著者の意見があってよい。

        たとえば、メモの項目「近所づきあい」について、著者はデータに語らせてはいるが、もっと突っ込んだ文章は見当たらない。

        マンションやアパートと職場との往復だけの日常だったら、まじめなサラリーマンだと自己満足できる。だけど、こんな暮らしをしていると、人生のさまざまな場面で語り合える人がいない。

        問題にぶち当たって打開策を見出せなくても、どうしたら良いのかわからない。その結果、自分自身を追い詰めてしまいかねない。こういう因果関係をもっと書いて欲しかった。


        「医療・福祉マネジメント 〜福祉社会開発に向けて〜」

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           日本福祉大学教授 近藤克則 著
          「医療・福祉マネジメント 〜福祉社会開発に向けて〜」

          評者; 医療経済研究機構専務理事 岡部 陽二

           本書は、著者近藤克則教授が,医療・福祉職向けに書いた論文集であり,日本福祉大学の社会人大学院で使われるテキストでもある.臨床レベルの「医療・福祉の統合」から、事業体レベルの「サービスの質向上と経営の両立」、「持続可能な社会」を目指す政策レベルまで、マネジメントの切り口で医療・福祉の質の充実を目指して科学的な理論展開を試みられた極めてユニークな学術書である。初学者・実践家向けのコラムも充実していて、読みやすい。

           「マネジメント」は往々にして利益や効率のみを追求する企業などの経営技術と解され、医療や福祉には馴染まないもの思われてきたが、介護保険とともに導入されたケア・マネジメントや事故対策として注目を浴びているリスク・マネジメントなど、この十年で状況は大きく変わってきている。著者はマネジメントを「限られた資源で最大限の成果を産み出すやりくり」と定義しておられる。さらに遡れば、マネジメント本来の意味は、もともと馬をうまく飼い馴らすところから、正しいことをする(do right things)ことである。計算間違いを正すといった物事を正しくする(do things right)コントロールはとは意味合いが異なる。経営の神様と言われたドラッカーは、時代とともにマネジャーの定義を変えてきたが、最終的には「知識を行動に具体化することに責任をもつ者」としている。

           本書の第一の目的は、この「マネジメント」の重要性を医療・福祉分野のさまざまな課題を取り上げて明らかにすることにある。「PDCAサイクルを回せ」「問題指向から目標指向へ」などのマネジメントの原則と方法論は、医療・福祉のあらゆる局面において有用である。本書は、その具体的な事例を豊富に示している。

           第二の目的は、医療・福祉分野でのマネジメントの特殊性を描き出すことである。生身の人間を扱う医療や福祉の領域では、ビジネスの世界に通用するマネジメント手法をそのまま取り入れることができない面も多々ある。医療法人や社会福祉法人は利潤の追求が目的ではなく、利用者のQOLの向上や福祉社会の開発を重視しているからである。


          日本福祉大学:公開国際シンポジウムと公開特別講義のお知らせ

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            公開国際シンポジウムと公開特別講義のお知らせ

            (近藤克則会員より)



            日本福祉大学 福祉社会開発研究所 主催

            「ケアマネジメントの日英比較−介護保険政策の多面的評価」

             ケアマネジメントの源流の一つはイギリスにあり,日本より10年早く,NHS ・コミュニティケア法により全英へのケアマネジメント導入が図られました.我が国に10年先行するイギリスと比較することで,我が国における介護保険下のケアマネジメントについて,さまざまな示唆を得られるはずです.
            ケアマネジメント研究の第一人者Challis教授をイギリスからお招きし,公開国際シンポジウム「ケアマネジメントの日英比較」を行います.
             Challis教授は,「ケアマネジメントは,費用を増大させることなく要介護者のQOLを向上させること」を実証した研究者です.全英にケアマネジメントが導入されて以降10年間の到達点と課題についてご講演いただく予定です.
             午後からは介護保険政策について,異なる側面から多面的評価を加えます.その中では,1999年度から3年間にわたる厚生科学研究費補助金(政策科学推進研究事業)を受けて日本福祉大学が取り組んできた介護保険政策の政策評価の成果も報告します.
            ケアマネジメントの日英比較を通じ,介護保険政策の課題を浮き彫りにしたいと思います.


            近藤克紀先生について

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              近藤克則教授らの論文が第12回川井記念賞を受賞しました

              2010年11月19日トピックス

               社会福祉学部の近藤克則教授(大学院医療・福祉マネジメント研究科長、健康社会研究センター長)らが発表した論文「地域レベルのソーシャル・キャピタル指標に関する研究」が、財団法人厚生統計協会より第12回川井記念賞を受賞しました。ソーシャル・キャピタルとは、地域や組織における人々の信頼感、互助・互酬・参加の意識及び機会など、共通の利益に資する社会的能力のことで、介護や虐待の予防や健康の維持といった公衆衛生の分野でも重要な指標となっています。

               川井記念賞は、財団法人厚生統計協会の創立者、故川井三郎氏の業績を記念することを趣旨として、月刊誌『厚生の指標』に掲載された論文の中から優れたものが選考・表彰されています。受賞論文は近藤克則教授を含む6人の研究者が執筆、『厚生の指標』第56巻(2009年1月号)に掲載され、この9月30日に開かれた同賞選考委員会で他の2つの論文とともに選ばれました。


              近藤克紀先生の著書について

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                近藤克則『「健康格差社会」を生き抜く』

                 著者は社会疫学専門家で、「健康格差社会」という言葉の生みの親。これまでの著作は、良くも悪しくも地味な学術書スタイルだったが、今回は完全な啓蒙書で、しかもスタイルが堂に入っている。歯切れ良く、たたみかけるように事実を提示し、明確に結論する。これは、うれしい期待はずれ。

                 理科系の人らしく、世界的な研究動向が広く紹介されていて、これによるとソーシャル・キャピタルと健康の関係に関する論文が、この10年間で3万6000本を越えているとのこと。論文のスタイルや長さが異なるとはいえ、社会科学における格差研究をはるかに超える量の論文が書かれているわけだ。門外漢は、こんな膨大な研究を渉猟するわけにいかないので、こういう本の出版は大歓迎である。

                 タイトルには「自助努力によって格差を克服する」というニュアンスがあって、少々違和感がある。第7章がこのタイトル通りの内容だが、本書全体としては健康格差のマクロな構造を繰り返し強調しているだけに、この部分だけが一人歩きして、自己責任論に絡め取られるのが心配。もっとも、全体としては著者の毅然とした姿勢が明確で、ちゃんと読めばそんな誤解・曲解は生じないはず。必読書です。